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葉真中顕の「絶叫」感想。【ネタバレなし】

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ちょうど実家に帰るということで、長編物が1冊欲しかったところだった。500ページ超えの小説はありがたかった。

試し読みしたところ、冒頭から引きつけるような内容だったので思わず購入。

 

あらすじ

期待の大型新人が紡ぐ、ひとりの女の壮絶な物語。 平凡な女、鈴木陽子が死んだ。誰にも知られずに何カ月も経って……。 猫に喰われた死体となって見つかった女は、どんな人生を辿ってきたのだろうか? 社会から棄てられた女が、凶悪な犯罪に手を染め堕ちていく生き地獄、魂の叫びを描く!

舞台は現代の東京。マンションの1室で発見された死体の身元を割り出していくうちに、ある事件が発覚していく。

刑事が戸籍や出身地をまわって、死体となった主人公鈴木陽子の人生を時系列に追っていくのと同時に、別の事件も同時に進んでいき、2作を同小説のなかで読んでいるように感覚になる。

しかし、ある一点で鈴木陽子の人生と、別の事件が交差していくことに。

 

読んでみた感想

絶叫というタイトルの通り、壮絶な人生を送っていた女性にスポットライトを当てた作品だった。

ただし、物語の進め方は非常に淡々としていて、目を覆うようなシーンもどん底に追いやられたような悲壮感もなく、淡々と状況を模写しているルポルタージュのような印象を受けた。

 

一人の女性が転落していく、という点においては宮部みゆきの「火車」や山田宗樹の「嫌われ松子の一生」のようなイメージを持っていたが、実際に読んでみると少しテイストが違った。

 

「火車」のように重厚ではなく、「嫌われ松子の一生」のように軽快な感じはない。

一人の女性の人生を、装飾せずに描いているようなノンフィクションに近い作品だ。それゆえに、リアルな悲壮感は非常によく伝わってくる。

 

火車や松子の主人公は、最後に一縷の望みを持っていたので悲壮感の中にも一点の光があったが、絶叫の主人公にはそれがない。

ただただ堕ちていくだけ。

しかも、主人公に問題があるというわけではなく、本当に落ちるべくして落ちるような環境下に置かれた状況も本当に救いようがない。

このような重苦しい悲壮感、というのは非常に久々に味わった。

 

ちなみに、伏線は丁寧に回収してくれていた。長編で伏線が散りばめられた作品だったので、少しのほころびが作品全体を台無しにしてしまいかねないのだが、そんな心配は無用だった。

違和感もなく、そして、さりげなく仕上げる文章に、作者さんの技術が光っていた。

 

伏線の回収だが、「そんなとこまで?」というくらい綺麗に仕上がっている。ラスト数行も「そこに紐づくのか!?」と意外性を突いてくる作品だ。

自分の中では、この本の本当のラストはページ最後ではなく、物語が進んでいる途中でだった。これ以上を書くとネタバレになるので伏せることにしよう。

 

さいごに

長い小説だったので、途中で中だるみしないかと心配していたが、そんなことはまったく心配なかった。

もっと読みたいと思わせてくれるくらい、テンポもよく非常によい作品だった。

長旅にお供にはオススメ。

この本のことを書くと、火車がもう一度読みたくなってきた。

 それでは今日はこのへんで。