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重松清「ブランケット・キャッツ」。感想【ネタバレ無し】

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重松清さんの作品らしからぬ表紙に目を奪われた。

文庫本が出たのは2011年だが、作品としては2003年に雑誌に掲載されたものらしい。

ちなみにドラマ化もされているというので、家庭的な作品かと思って読み進めてみたが、よい意味で期待を裏切らた。重松節の効いた作品だ。

 

あらすじ

2泊3日で猫をレンタルするという、一風変わったお店のマスターが短編集を通して登場する。

このお店で猫を借りていったお客さんが主人公の短編集だ。

お客さんは毎回異なる人ばかり。物語を通して、それぞれのお客さん同士で関連があるというものではない。1話1話が全くことなるシチュエーションだ。

 

猫をレンタルする人には、それぞれ事情がある人ばかりだ。

子供ができない夫婦。

横領をした女性。

捨て猫を拾ってきたフリーターの青年。

イジメが事件へと発展してしまった少年。

老人ホームに入る女性。

リストラされた一家の大黒柱。

レンタルショップから脱走したがっている猫。

どの人(猫)も順風満帆というわけではなく、特別な事情を心に持つ人ばかりだ。そんな人たちのところに2泊3日でやってきた猫。そのレンタル猫を通して人々はどのように変わっていくのか。現状から目をそらしてしまうのだろうか。それとも救われることはあるのだろうか。レンタル猫と2泊3日だけの主人の日々を描いた短編集だ。

 

読んでみた感想

短編集のお手本のような作品だ。

どの作品も時間軸とページ数がほどよくマッチしている。あとがきで重松清さんいわく、桃太郎やかぐや姫のような短い童話の話で、さらにあまりスポットがあたらない部分、たとえば、桃太郎・かぐや姫がどのように成長していったのかを書くように描いた作品らしい。

 

まさに、そのような例えがピタリと当てはまる作品ばかりだ。

主人公は猫ではなく「人」であり、その人の人生において、非常に大きな事柄が起こっているところに非日常の「猫」が入ってくる。人にとってはその前後の方が非常に重要なのだが、物語の中心はその人の本筋から少しそれた「猫」との触れ合いにスポットが当たる。

良い意味で間の抜けたような、そしてそのつかの間の休息で、色々抱えてる人の心境が本当に小さく変化する。あくまで心境だけだ。状況までは変化しない。しかし、その小さな心境の変化が読み手の心に自然にスッと入ってくる。重松清さんらしい非常に楽しめる作品だ。

 

さいごに

この作品自体も非常に面白い。しかし最後のあとがきも漏らさず読んでもらいたい。作品の種明かしではないが、どのような心境で著者が書いた作品なのかが分かる。それだけでこの作品を思い起こしてより一層楽しめることができる。

 

この短編集、どの作品が一番好きかと聞かれると、最後の「あとがき」と答えてしまうくらい非常によいあとがきだった。

 

全体を通して読んでみても、重松清さんらしい少しダウナーな作品ばかりだが、今回は猫が登場したということで多少は明るく装飾されているようにも思えるが、本質は重松作品。非常に心地よいテイストの作品だった。

それでは今日はこのへんで