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赤ヘル1975。感想【ネタバレ無し】

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重松清さんの小説。広島東洋カープの帽子の色が紺から赤に変わった年、そしてカープがリーグ初優勝を決めた年、1975年が舞台の小説だ。

広島を舞台にした物語を書くことが多い重松清さん。この小説はまさに彼の力作なのだろうなと読む前から感じるとることが出来る。

それゆえに、いつ読むべきかと身構えてしまってなかなか手が出せなかった。

とにかく時間のあるときに一気に読んでしまいたかった。そして、読み終えたので感想を書き留めていこうと思う。

 

あらすじ

主人公は東京から転校してきた中学生のマナブ。転校といっても家庭に多少訳がある。父親がいつも怪しげな商売に手を出しては失敗してを繰り返して、親子二人で流れてきた場所が広島。

 

マナブは転校してきてから様々な人に出会う。

後に彼の「ツレ」となる、地元中学に通うヤスとユキオ。特にヤスも様々なものを背負いながら中学生活を送ることに。彼らは生粋のカープファンだ。

そして同じ中学校に通う少女とも親交を深めることに。彼女を取り巻く大人たちの中には原爆の被害にあった人もいる。縁があったのかマナブはその人たちの人生の一部に踏み込むこととなる。

 

この小説は中学生3人の1年間を描いた作品だ。そして、もちろん舞台は1975年。古葉監督率いるカープが初のリーグ優勝を飾った年だ。

3人とカープが交わることはあるのか。

直接交わることがなくても、3人の心の中にはカープが大きく占めることにかわりはない。1975年、カープはリーグ優勝を決めた。そして彼ら3人にとってはどんな年となったのだろうか。

 

読んでみた感想

この小説の題材は「カープの優勝」そして「原爆」だ。

中国地方、とりわけ広島を舞台にした小説を数多く書いてきた重松清さんにとってみたら広島のど真ん中とも言える2つの題材を1つの小説に持ってきた。

僕が今まで読んできた重松清さんの作品の中に、この2つの題材が入っている小説というのは見たことがない。

 

どちらか1つを1小説におさめて、2作品を作ることだってできたはずだ。

いや、むしろ重松清ファンならそうして欲しいとも思う。

しかし結果として2つの題材を1つの小説に入れてきた。

それだけに作品に対する力の入れ方も相当なものだと、読み手に十分に伝わってくる。

重松清作品の代表作は「流星ワゴン」「ビタミンF」なのだろうが、ご本人が一番力を入れた作品は、この「赤ヘル1975」ではないかと僕は思う。

 

さて、前置きが長くなってしまったが読んでみた感想を書き留めていこう。

わんぱく中学生が3人集まれば賑やかな雰囲気で話が進むようにも思えるが、時代は1975年。バブル経済を迎えるで前で、しかも戦後がまだまだ色濃く残る時代。特に広島という土地柄、原爆に対する思いはまだ薄れる気配もない時代だ。

そして1975年のカープは序盤は優勝するという感じでもない。そんな時代を象徴するかのような雰囲気の中、物語は進んでいく。直接的な言葉を使うと、全体的にどんよりと重い空気の中話が進んでいく。そんなイメージを持った。

 

この色々と背負った3人の中学生が1年間をがむしゃらに駆け抜ける姿は、高度成長期に入る前の混沌とした時代を象徴しているかのようだった。

それだけでも十分なのに、小説が後半へと進むに連れて、カープのリーグ優勝前で広島の街全体がソワソワしている雰囲気が非常によく伝わる。

このあたりの描写が、3人の中学生ががむしゃらに走るだけというものではなく、明確な、そして大きなゴールに向かって走っているようにも見えて非常に美しい。

 

一番よかったシーンを問われたら、即答でこう答えることが出来る。1番最後のページだ。

終わりがどうなるのか、自分ならどうするかを想像しながら読んだ。

まさかこのような終わり方にするとは。なんとも重松清さんらしい終わり方だ。

 

さいごに

重松清さんの物語の終わらせ方は、あまり答えを教えてくれないように感じる。テレビや映画でいうと最後のシーンを観せずに、エンドロール後の数秒の静止画のような映像を観せて終わりにするようにも感じる。

しかし、それがどの作品もことごとく良い。

重松清さんの作品全般でいえることだが、重松作品の最大の良さは風景の描写が恐ろしくうまい、ということに尽きる。

その描写力で強烈な最後の映像を持ってくるものだがら、読んでいるこちらは何日も何日も作品の余韻に浸ることができる。

赤ヘル1975もそのような終わり方だ。主人公たちの本当のその後、彼らの成長、そして彼らがどのような大人になるのかは読み手が汲み取るほかない。

非常によい終わり方だ。

重松清さんの力作は最後の1滴まで重松作品らしい、本当によい作品であった。

赤ヘル1975に出会えてよかったと思うと同時に、2018年はカープが34年ぶりの日本一へと輝くことを期待する。

それでは今日はこのへんで。