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「いとしのヒナゴン」感想。【ネタバレなし】

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最初にこの小説に出会ったのが約10数年前。今回で3度読んだことになる。重松清さんの「いとしのヒナゴン」の感想を書いていく。

 

重松清さんの作品といえば、主人公は田舎出身(ほとんどが中国地方)でホロリとくる人情物の作品が多い作家さんの一人だ。

人情物と言っても笑って終わりというわけじゃなくて、どちらかといえば、主人公は人生があまりうまくいっていない中年男性で、全体的にダウナーな感じで、そして最後はかならずしもハッピーエンドではなく色々考えさせられる終わり方。という作品が多いかも。

 

いとしのヒナゴンもそんな作品の一つ。コメディタッチの話だけど、現実的な問題も直視していて、なおかつそのことも面白くも涙を誘いながら上手く読ませてくれた作品だった。

 

あらすじ

広島の小さな田舎町が舞台。市区町村合併をめぐり揺れる町政。そこに元暴走族の町長いっちゃんが、昔話題になった未確認生物「ヒナゴン」を捜索する係「類人猿課」を設立したのでさらに騒動は大きくなる町政。

そんな町長いっちゃんを囲んで、様々な人の人間模様を涙あり笑いありと、描いたコメディタッチに仕上げた作品。

ヒナゴンの元ネタは、1970年代に広島県比婆郡で発見された未確認生物のヒバゴン。

 

読んだ感想

さすが重松清。重松節全開の作品だった。

僕は彼の作品が好きで、今までに30冊以上は重松作品を読んでいるが、一番よかった作品を選ぶとしたら「いとしのヒナゴン」か「流星ワゴン」のどちらかだろう。

どちらも同時期(2000年代前半)に書かれた小説で、僕は重松清の黄金期はこの時期(2000年代前半から中盤くらい)だと思っている。

 

この作品全般を通して感じたことは、風景を完璧に写生している。この1点につきる。

どのシーンを見ても、その風景がバッと頭に描写される。風景だけじゃなく匂いや音までキレイに再現できる。まさに写生のプロだ。

 

また、コメディタッチの小説は、他の作家さんもたくさん出しているが、一歩間違えればマンガのようにも受け止めれてしまう。重松清さんの作品だとマンガと現実の境界線を行ったり来たりはするけど、最終的にはキレイに現実に戻してくれる。 

というのも実は重松清さんの作品のほとんどが、99%ダメだろうなという場面で、結果は上手くいかないように書かれている。コメディタッチの作品だと1%の成功率でも成功するという描かれ方が多いが 、重松清作品ではそこは現実味を重視してか99%ダメなら結果はダメ。という描き方をしている。

そこの部分が、マンガと現実の境界線をウロウロしている読者を、一瞬で現実に引き戻してくれるのだろう。

 

小説のみどころ

これについては、最後のページが一番のみどころだ。これは言い切れる。

終わり方は本当に素晴らしい。今まで読んできた小説の中でも1番よかった終わり方だ。

終わりも風景の描写にかなりこだわっていて、風景の細部まで描写されている。

何かビックリするような奇想天外な結末ではないだが、上下巻の長い物語は全てこの結末を読むためだったのだと思わせてくれるくらい本当によい終わり方だ。

とくにかく最後が一番!

 

さいごに

この小説を初めて手にとったのは僕が20代半ばの頃、どちらかというとこの小説の主人公達の若手と同年代だった。

そして今、あらためて読み返した年齢が町長たちと同年代。

初めて読んだときから10数年の時を経て読み返してみたが、少しだけ見方が変わっていた。

それでも、風景の描写は本当に何も変わらずに田舎の風景だけではなく、音も匂いも言葉だけで綺麗に表現されていて、改めて重松清さんのすごさを感じさせてくれる1冊だった。

 

ちなみにこちらの作品は映画化もされている。映画よりも小説のほうがよかったのだが、映画は映画でよかった。

もう一度、誰か映画化してくれないものかな。