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「重松清」 鉄のライオン。感想【ネタバレ無し】

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2011年の重松清さんの作品。改題されての出版となっているので、初版はもう少し古い作品だと思う。

この小説を購入したのがおおよそ5年前。じつは5年前は途中まで読み進めたものの読むのをやめてしまった。

というのも、この作品は話が大きく動かない。

 

意外性もあまりなく当時としてはあまり面白さを感じなくて読むのをやめてしまったのだが、ある程度年を重ねた今読み返してみると作品のよさがおぼろげながらも理解できたと思う。

読み返してみてわかった、良い作品だ。

 

あらすじ

時代は1980年台、重松清さんが大学入学のために上京してきた年だ。

ご本人も作品内で言われているのだが、この作品は自著伝でも回顧録でもない。ただモデルは当時大学生だった重松清さん自身のようだ。

 

あらすじとしては、この大学生の日常が全12作の短編集から成っている。

大学生活と聞いたら仲間内でバカなことをやっている青春ものとばかり考えてしまいがちだがこの作品は違う。

どちらかというと、誰もが若い時には経験するだろう少し苦い経験ばかりを集めたものだ。

特に誰かに対して冷たい態度をとり、それを後年後悔する。そういう描写が多い。

良い意味で重松清さんらしい作品だ。

 

読んでみた感想

読了して感じることは爽快感というよりも、胸にチクッと何かが刺さっているような気分になる。

1980年台に学生生活を送ってこなかった人にも共感できる部分は多いにある作品だ。

重松清さんの学生時代というのは振り返ってみると楽しかったというタイプなのだろうが、その中での小さな、そして当時の自分ではどうすることもできなかったであろう後悔というのが非常によく伝わってくる。

この後悔という部分は多かれ少なかれ人は共通してもっている。

そこに読者は引き込まれていくのだと思う。

 

冒頭でも書いたように大きく話も動かない。変わったオチもないし意外性もない。そういうものを求めている人には退屈な作品なのかもしれないが、自分の若い頃と重なる部分も多い。

 

恐らく5年前に初めて読んだ僕は実はまだそこまで昔のことに浸るほどの余裕もなければ、学生時代をそこまで懐かしいと思うに至っていなかったのではないだろうか。

たった5年、されど5年。5年ほどで自分の感性というのが変わったことに少々驚いてる。 

それほどまでに最初読んだ印象とたった今読んだ印象とではまるっきり違う作品だ。

 

さいごに

この作品を読んで 改めて自分の半生を振り返ってみたが、一番思い出深いのは学生の時ではなく上京してきた当初のことだ。

当時は自分のことに精一杯だったがそれでも優しくしてくれた人もたくさんいた。

その人たちとは今は連絡を取り合っていない。どこでどうしているのかも分からない。知人を通しての風のうわさもきいてない。

 

その人達に改めて感謝する気持ちと、どうかみんな幸せに生活していてくれたらなと思う。もう少し年をとって会ってみるのもよいかもしれない。

その時まで元気でがんばれたらなとも思う。そういう考えるきっかけを与えてくれたこの作品にも感謝したい。

それでは今日はこのへんで。